ごく普通の日本人が出逢った外資系企業の世界 2.0

日用品・化粧品・IT業界における外資系企業での経験を通して学んだことをまとめたサイトです。著書「世界基準のビジネススキル - ごく普通の日本人が出逢った外資系企業の世界」はamazonのkindleunlimitedにて無料で読んで頂くことができます。著書や新旧ブログの内容はYouTubeでも順次アップ予定です(チャンネル名:BizChan)。

ビジネスモデルと組織文化の関係

世界的に成功している複数の企業に勤めてみて、そのビジネスモデルには組織の文化・背景が深く関係していることを感じました。

 

私が最初に勤めた企業は、アメリカ系の日用品メーカーでした。主に扱っていた商品は、洗剤や紙おむつといったキャピタル・インテンシブ(工場のラインなどの初期投資が大きく、数十〜数百億円かかる)のカテゴリーでした。

したがって、商品を売る前に将来5〜20年にわたるビジネスポテンシャルを事前に綿密に精査する必要があります。また、工場のラインや原料の購買にスケールメリットが効きやすいので、仕様の世界共通化が求められます。そのため、意思決定に至るまでのプロセスの世界標準化が必要があるとともに、組織の人間の考え方・価値観・ビジネスに対するアプローチの仕方などが標準化される必要がありました。

移民国家であるアメリカ発祥の米系企業での仕事は、概して合理的かつ論理的に進められます。また、この企業は基本的に新卒を採用して育てていく(中途採用は基本的に行わない)ことを組織戦略としていました。これらは、キャピタル・インテンシブなカテゴリーにおいて、非常に大きな強みとなっていました。

 

私が次に努めたのはフランス系の化粧品メーカーでした。化粧品業界というのは、基礎技術に関しては世界標準及びスケールが重要となります。一方で、製造に関わる初期投資が比較的少ないため参入障壁も低く、市場のプレイヤーの数も大きいので5%のシェアを超えるとトップブランドになることができます。これは、3〜4のプレイヤーで市場を独占している紙おむつなどのカテゴリーに比べて、化粧品はより限定的な消費者に熱狂的・圧倒的に好まれるエッジの効いた商品である必要があるということです。

そのため企業としては、日々移り変わるトレンドや各地域・国の特異性により深く迅速に対応することが求められます。したがって、その戦略・プランを生み出す組織には、感度の高い多様性に富んだ人材が必要となります。また、「美」という数値化しにくいものを、迅速な意思決定を持って進めていくビジネスプロセスが必要となります。

フランス企業の強みは、その「美」に対する感性とともに、トップダウンの意思決定にあります。これは、ともすれば末端で働く人間にとっての分かりにくさ・不透明さと感じられることもあるのですが、化粧品業界で成功するための大きな成功要因となっていました。

また、経験者を多く中途採用することで、組織の多様性を促進し、また業界最先端のトレンドを組織に取り込むことに勤めていました。

 

この2つの企業の組織文化は、真反対と言っていいほど異なっていました。しかし、それぞれの業界において成功するための要素を見事に備えていたわけです。他の業界であれば、おそらく今ほどの成功は収められなかったと思います。

組織の文化や背景というものは、一朝一夕で簡単に変えられるものではありません。だからこそ、自社の文化・背景を深く理解し、それに根ざした戦略を根幹とするビジネスモデルを構築していくことが大切なのだと感じました。

 

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変化を求め続ける:20年 x 5ステージの人生

人生設計・キャリア設計を考える上で念頭に置いているのが、100歳まで生きることを前提とした「20年 x 5ステージ」という人生の捉え方と、「100人に1人の3乗=100万人に1人」という希少性の考え方です。

 

1)100歳人生を前提とした20年 x 5ステージの人生設計

食生活や医療の改善によって、今の20−40代の人の平均寿命は100歳近くになると言われています。さらにインターネットの普及によって、知識やスキルの習得に必要な年数が激減しました。

これによって、就業可能年数が長期化するとともに、1年にできることの密度も昔に比べて数段高くなっています。つまり、以前なら1つのことをやり遂げるのが精一杯だった人生が、1つのことでは終わりきれない人生になっていると言えます。

このことから、私は自分の人生を20年 x 5ステージ、つまり0〜20・21〜40・41〜60・61〜80・81〜100歳という形で捉えています。ということは、不惑と言われた40歳になっても、それは前半の2ステージが終了しただけで、残り3ステージを残しているということです。

 

2)100人に1人の3乗=100万人に1人という希少性を達成する

一方で、知識やスキルを短期間で習得できるということは、年数を基にした経験値が差別化の要因になりにくいということでもあります。むしろ、新しい知識を習得した若い世代の方が、40代の中高年世代よりも市場価値という意味ではアドバンテージを持つことも珍しくありません。今の若い世代も、そのさらに若い世代に対して同様のジレンマを抱えることになるので、これはこれからの将来、世代に変わらず共通する課題となります。

この課題に対する解答の一つが藤原和博さんがおっしゃっている、3つの分野で100人に1人の人材になることです。まず20代にベースとなるスキルを身につけ(藤原さんの場合は営業)その後そこから半歩踏み出した分野でも100人に1人の人事となり(藤原さんの場合は組織運営)、最後に最初の2分野からできるだけ離れながらも意味のある3歩目を踏み出す(藤原さんの場合は公立中学校の校長先生)というものです。こうすることによって、希少性のある100万人に1人の人材となることができます。希少性は需要と供給の論理から、その人の稼ぐ力にも直結します。

 

学校の期間を除くと、実労働可能期間は残り4ステージの80年。第2ステージ(21〜40歳)で最初の2分野で100人に1人(=1万人に1人)の人材となり、その後自分の興味や市場のニーズなども踏まえて3歩目を踏み出す。その辺りで、できれば会社に依存しない生き方へとシフトをずらしながら、第4ステージを迎える。こんなふうにすると、生涯、自分のやりたい仕事の従事しながら、求められる人材であり続けられるのではないかと思います。

 

[参考図書]

  

 

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ファイナンスマネージャーとしてのスキル・キャリアの積み上げ方

世の中いろんなタイプのファイナンスマネージャーの方がおられますが、いろんな企業・業種・国を担当してきて、自分なりに良かったなと思えるスキルの積み上げ方があるので、それを書き留めておきたいと思います。

 

1)最初に原価率が50%前後の業種で、複数カテゴリー・ブランドを展開している規模の外資系企業で、ファイナンスマネージャーとしてのキャリアをスタートする

 そもそもファイナンスという部署の機能は、外資系企業の方が歴史的に進んでいます。その中でも、コストの割合が原価・マーケティング費用・人件費など、いろんな要素にバランスよく配分されている業種(例えば日用品など)の方が、「コストを横断的に見てその取捨選択・優先順位を提言」するファイナンスとしてのスキルを磨きやすいように思います。また、複数カテゴリー・ブランドを持っている企業の方が、ポートフォリオを横断的に見て戦略と投資判断」をする機会も増えるでしょう。

ファイナンスマネージャーの価値は、「複数の要素を鳥瞰的に俯瞰して、企業戦略に基づいて一貫性のある投資を促進」しようとするとき、特に大きくなります。ビジネスに対するアプローチのスタンスは、仕事を始めて最初の数年で有る程度固まってしまう部分もあるので、この時期にビジネスを俯瞰する必要性に迫られる場所に身を置いた方がバランスよくスキルを身につけられるように思います。

 

2)ベースのファイナンススキルが身についたら、できるだけいろんな企業・業種・国での経験を積み上げる

 ファイナンスマネージャーとしての楽しさの一つは「ビジネスモデルを理解し、それを骨太に大きく育てていくための投資アドバイスを行う」ことだと思います。このビジネスモデルというのは、自分の担当するビジネスの置かれた状況(市場環境・自社の強みや弱み・目標)などによって、大きく変わります。例えば同じ化粧品のビジネスであっても、どの企業にも共通する成功モデルというものはありません。

ところが、同じ国の同じ企業の同じカテゴリーで長期間働いていると、その環境特有の要素があたかも普遍的なものであるかのような錯覚が生じます。いろんな環境のビジネスを経験することによって、その環境に長くいる人たちが持つバイアスというものが除かれ、純粋にビジネスモデルを育てていくための判断ができるようになります。

業界知識を掘り下げていくことは多くの職業にとって有用ですが、ファイナンスマネージャーとしての強みはむしろ既存の業界常識にとらわれないフラットで鳥瞰的な判断」にこそあるように思います。

 

転職も含めて、社内外での幅広いビジネス経験によって、ファイナンスマネージャーとしての視点の広さ(= 他部署に対するユニークな強み)が培われていくのではないかと思います。

 

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